結論:犬は少量であれば「はちみつ」を食べても大丈夫
「はちみつ」は、犬の健康に役立つ可能性がある自然食品として注目されています。結論、少量であれば、犬に与えても安全です。
はちみつのメリット
・抗菌作用のあるポリフェノールを含有
・血液や骨の形成に必要なミネラルを含む

しかし、与える際には以下の点に注意が必要です。
- 高カロリー:過剰摂取は肥満や糖尿病のリスクを高める可能性があります。
- ボツリヌス菌:市販のはちみつにも残存している場合があり、中毒の危険性があります。
- アレルギー:花粉が混入している可能性があるため、花粉症の犬には注意が必要です。
結論として、はちみつは犬に少量与えることができますが、その量と頻度に十分注意を払う必要があります。
愛犬の健康状態や体質を考慮し、心配な場合は獣医師に相談した上で与えるかどうかを決めることをオススメします。
はちみつに含まれる栄養素とメリット

糖質:即効性エネルギー源
はちみつの主成分は糖質で、100グラム中約81.9グラムを占めています。この糖質の大部分は果糖とブドウ糖からなり、消化が早く、すぐにエネルギーとして利用されます。
疲れが溜まっている愛犬や元気がないときには、はちみつを与えることで素早くエネルギーを補給できるといわれています。
ビタミンB群:健康維持のサポート役
ビタミンB群も、少量ながらはちみつに含まれています。例えば、ビタミンB2は皮膚と被毛の健康維持に役立ち、ビタミンB6はタンパク質代謝と細胞合成をサポートします。
また、葉酸は神経組織の発達やDNA合成に関与し、特に妊娠中の母犬に有益とされています。
ポリフェノール:抗酸化作用と抗菌効果
はちみつの注目すべき成分の一つが、ポリフェノールです。
カフェ酸やクエルセチンなど、10種類以上のポリフェノールが含まれており、これらには抗酸化作用や殺菌・抗菌作用があります。これらの作用は、愛犬の病気予防や老化防止に役立つ可能性があります。
ミネラル類:体内機能の調整役
ミネラル類も、はちみつには微量ながら含まれています。ナトリウム、リン、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどが存在し、体内の様々な機能を調整する役割を果たします。
例えば、カリウムは血流を改善し、マグネシウムは血圧調整や骨の健康な成長を促進するとされています。
グルコン酸:美容と消化をサポート
はちみつにはグルコン酸も含まれています。
これには殺菌作用や保湿効果があり、プレバイオティクスとしても機能します。愛犬の毛艶を良くしたり、便秘解消に役立つ可能性があります。
ハイシニア期・介護期の栄養補給に
はちみつの糖質は、消化器官に負担をかけずに素早くエネルギーとして利用できます。食欲が低下している時でも、少量で栄養補給ができるのが特徴です。実際に、愛犬の介護時に食事ができない状態でも、はちみつ入りの水を飲んでくれたという体験談もあります。
低血糖のリスクがある場合や、てんかん発作のような症状がある場合に、早めに糖質を摂取させる目的でも役立ちます。また、薬膳的な観点からも、はちみつは食欲不振、空咳、疲労、皮膚の乾燥時などに使用されます。
薬膳と外用としての利用
はちみつの糖質には水分を保持する働きがあり、喉や肺、皮膚の乾燥が気になる時に使用されます。日本薬局方のハチミツは、口唇の亀裂やあれに対する効果も認められています。外用として塗ることも効果的です。
さらに、はちみつに含まれるオリゴ糖は、腸内環境の健康維持に役立つことが知られています。
抗菌成分の活用
はちみつの種類によっては、強い抗菌作用を持つ成分を多く含むものがあります。例えば、「TA20+」や「TA35+」という表記がある場合、数字が大きいほど抗菌活性が高いことを示しています。
ただし、加熱するとこの抗菌性が失われるため、抗菌効果を期待する場合は生はちみつを選ぶことをおすすめします。愛犬の歯周病対策としても活用できるかもしれません。
食欲アップ・ご褒美
甘みは犬にとって魅力的な味覚です。はちみつの香りそのものは犬にとって特別魅力的ではないかもしれませんが、少量を上あごにつけて舐めさせてみると、多くの犬が好んで舐めることがあります。
ハイシニア期の食欲不振時には、はちみつを少量舐めさせることで食欲を刺激できる可能性があります。また、甘みを好む愛犬にとっては、ちょっとしたご褒美としても活用できるでしょう。
一方で、愛犬がはちみつを食べるリスクについても知っておきましょう。
飼い主は知っておくべきボツリヌス菌のリスクとは
はちみつは自然由来の健康食品というイメージがありますが、ボツリヌス菌という危険な細菌が含まれている可能性があります。この菌は人間の赤ちゃんにとって危険であることはよく知られていますが、犬にとっても深刻なリスクとなります。
ボツリヌス菌の特徴
- 土壌中に広く存在し、熱に強いため通常の加熱では死滅しない
- 健康な腸内環境では問題にならないが、免疫力が弱い個体では増殖し毒素を産生する
- 筋肉や神経に影響を与え、重症の場合は死に至ることもある
犬の場合、人間よりも体が小さいため、成犬でもボツリヌス中毒のリスクが高くなります。感染すると以下のような症状が現れる可能性があります:
また、以下に当てはまる場合は特に注意が必要です。
- 子犬
- 老犬
- 免疫力が低下している犬
- 腎不全の犬
これらの犬は特に感染リスクが高いため、はちみつを与えないようにしましょう。
もし愛犬がはちみつを食べた後に上記のような症状が見られた場合は、すぐに獣医師の診察を受けてください。ボツリヌス中毒の進行を防ぐことが、重篤な合併症を防ぐ鍵となります。
安全性を確保するには、120度以上で30分以上加熱する必要がありますが、市販のはちみつでこのレベルの加熱処理がなされているものは少ないのが現状です。
したがって、愛犬の健康と安全を第一に考え、はちみつを与える際は細心の注意を払う必要があります。
もう少し、注意点について詳細にみていきましょう。
犬にはちみつを与える際の注意点

はちみつは多くの犬にとって有益な食品ですが、以下のような場合は与えるべきではありません。
子犬、免疫力が低下している老犬、抗がん治療中の犬
ボツリヌス症のリスクがあるため、腸内環境が未成熟または弱っている犬には注意が必要です。
ただし、現在のところ犬がはちみつを食べてボツリヌス症になった確実な報告はありません。人間の場合、1歳未満の乳幼児には与えないよう注意喚起されています。
糖尿病や肥満の犬
はちみつの主成分は糖質(ブドウ糖、果糖)であり、血糖値を上げやすいです。糖尿病や肥満が気になる犬には与えないようにしましょう。
特定の薬を服用中の犬
特に、インスリンを投与されている犬にははちみつを与えられません。血糖値のコントロールに影響を与える可能性があるためです。他の薬との相互作用は現在のところ報告されていませんが、心配な場合は獣医師に相談しましょう。
アレルギー体質の犬
はちみつには様々な物質が含まれており、花粉アレルギーやミツバチアレルギーのある犬には反応が出る可能性があります。アレルギー体質の犬には避けた方が良いでしょう。
これらの注意点を踏まえ、愛犬の個別の状況に応じて、はちみつを与えるかどうかを慎重に判断することが大切です。不安な点がある場合は、必ず獣医師に相談してから与えるようにしましょう。
犬に与えるはちみつの種類と適量
はちみつには様々な種類があり、犬に与える際にはどの種類を選ぶべきか、また適切な量はどれくらいかを知ることが重要です。
純粋はちみつ
蜂が花や樹木から集めた蜜に、添加物を加えず、成分調整も行っていないもの。商品には「純粋」や「Pure」と表記されています。
加熱はちみつ
蜂蜜に水飴や果糖、ショ糖などを加えて加工したもの。日本では糖類を40%未満まで添加したものが認められています。
精製はちみつ
蜂蜜から匂いや色を取り除き、甘味だけを抽出したもの。加熱濃縮処理後に色や香りを調整していることが多いです。
これらのはちみつは、適切な注意点を守り、適量であれば犬に与えても問題ありません。
マヌカハニーについて
マヌカハニーは強力な殺菌・消毒作用で知られており、適量を守れば犬に与えても問題ありません。しかし、以下の点に注意が必要です:
- 犬への効果はまだ明確ではありません。
- 品質の良い本物を選ぶことが重要です(「UMF」「MGO」「MGS」のマークを確認)。
- 純粋なはちみつなので、ボツリヌス菌や花粉が含まれている可能性があります
- 子犬、シニア犬、腎不全の犬には与えない方が安全です。
与える際の適量
個体差があるため、適量を示すことは難しいです。少量総合栄養食などに混ぜるなど、少しずつ試しましょう。ただし、上述したリスク等もあるので、心配な場合は獣医師へ相談してみましょう。
与える際は以下の点に注意が必要です。
はちみつを与える際の留意事項
- 主食(総合栄養食)の摂取を妨げない量にとどめること。
- 犬の年齢や健康状態によっては、特定栄養素の過剰摂取に注意すること。
- これらの量は、避妊・去勢済みの犬で、1日の総摂取カロリー目安の1割をおやつとして算出しています。
はちみつを与える際は、愛犬の個別の状況を考慮し、必要に応じて獣医師に相談しながら適切な量を決めることが大切です。
犬に与えても大丈夫なはちみつ製品とNGな製品

犬に与えても大丈夫なはちみつ製品
犬用はちみつ入りクッキー・ボーロ
ペットショップで販売されている犬用クッキー・ボーロ製品は、健康な成犬であれば安全です。ただし、与えすぎないよう量に注意しましょう。
はちみつ入りヨーグルト
無糖プレーンヨーグルトに少量のはちみつを加えたものは、健康な成犬なら問題ありません。避けた方がよいはちみつ製品
人間用はちみつ入りクッキー
砂糖や脂肪が多く含まれていることが多いため、肥満のリスクがあります。
はちみつ漬けレモン:
レモンの皮に含まれるソラレンが、嘔吐、下痢、皮膚炎、気分の落ち込みを引き起こす可能性があります。
はちみつキャンディ
窒息のリスクがあります。糖質が多く、肥満につながりやすいです。
手作りおやつについて
犬用の手作りクッキーのレシピにはちみつが含まれることがありますが、はちみつなしでも作ることができます。心配な場合は、はちみつを除いて作ることをおすすめします。健康な成犬であれば、適量のはちみつを与えても大丈夫です。
子犬にははちみつを与えないようにしましょう(ボツリヌス菌中毒のリスクがあるため)。はちみつは糖質の補給には使えますが、その他の栄養成分の補給はあまり期待できません。
はちみつ漬けレモンやはちみつキャンディは犬に与えることは避けましょう。
意図せず犬がはちみつを食べてしまった場合
愛犬が誤ってはちみつを舐めてしまい、以下のような症状が出た場合はボツリヌス菌感染の可能性があります。
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
これらの症状が見られた場合、またははちみつを摂取後に犬の体調に変化が見られた場合は、速やかに動物病院へ連れて行くことが重要です。
はちみつに関するよくあるQ&A
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低血糖の犬にはちみつが良いって本当?
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低血糖の犬にはちみつを与えることで、素早くエネルギーを補給できる可能性があります。はちみつは糖分が豊富なため、血糖値を上げる効果が期待できます1。ただし、獣医師の診断と指導に基づいて対処することが重要です。
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犬にはちみつを与えたいけど、いつから(何歳から)食べていいの?
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一般的に、1歳を過ぎてから与えるのが良いとされています1。子犬は免疫システムと消化機能がまだ不安定なため、はちみつに含まれる可能性のあるボツリヌス菌のリスクを避けるためです。
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はちみつ入りのパンを犬に与えて大丈夫?
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人間用のはちみつ入りパンは避けた方が良いでしょう。犬用に加工された製品であれば問題ありません2。ただし、カロリーや小麦アレルギーには注意が必要です。
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咳がある・気管虚脱の犬にはちみつが効果的って本当?
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はちみつには抗炎症作用があり、咳や喉の炎症を和らげる可能性があります。ただし、気管虚脱などの深刻な症状の場合は、獣医師の診断と治療が不可欠です。
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老犬にはちみつを与えて大丈夫?
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基本的には問題ありませんが、老犬は内臓機能が低下している可能性があるため、与える量には特に注意が必要です1。また、糖尿病や肥満のリスクがある場合は避けた方が良いでしょう。
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はちみつ梅干しって犬が食べても良いの?
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はちみつ梅干しは犬には適していません。梅干しの塩分や酸味が強すぎる上、種子も危険です。純粋なはちみつを少量与える方が安全です。
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愛犬が心臓病を患っています。はちみつを食べさせるのはNG?
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心臓病の犬にはちみつを与えることは慎重に検討する必要があります。はちみつの糖分が血糖値を上昇させ、心臓に負担をかける可能性があるためです。獣医師に相談し、個々の状況に応じた判断をすることが重要です。
まとめ
はちみつは、適量を守れば愛犬にとって健康的な食品であり、エネルギー補給や抗酸化作用など多くのメリットがあります。
ただし、与える際には犬の年齢や健康状態に応じた注意が必要です。特に、子犬や老犬、免疫力が低下している犬にはボツリヌス菌のリスクがあるため、慎重に扱わなければなりません。また、糖尿病や肥満を抱える犬には避けるべきです。
飼い主としては、適切な量と頻度を守ることが大切です。愛犬の健康を守りながら、はちみつの恩恵を最大限に活用しましょう!