犬にみかんをあげても大丈夫?
一般的に、犬にみかんを与えることは、適量であれば問題ないとされています。みかんは水分補給やおやつとして与えることもできますが、与える際にはいくつかの重要なポイントと注意点があります。
特に、与えすぎや不適切な与え方は、犬の健康を害する可能性もあるため注意が必要です。
犬は体内でビタミンCを合成できるため、積極的に食事から摂取する必要はないという意見もあります。しかし、研究によっては、犬もビタミンC欠乏症になる可能性が示唆されており、特にシニア犬などでは、ビタミンCの合成能力が低下することも考えられています。
そのため、みかんに含まれるビタミンCが全く無意味というわけではありませんが、主要な栄養源として考えるのではなく、あくまで嗜好品として捉えるべきでしょう。
犬にみかんを与えるメリットはある?

適量のみかんは、犬にとっていくつかのメリットをもたらす可能性があります。
栄養素の摂取
みかんには、犬の健康維持に役立つ栄養素が含まれています。
- ビタミンC:
免疫力の向上や抗酸化作用が期待できます。特に、シニア犬では体内のビタミンC合成能力が低下する可能性があるため、わずかながらも補給になるかもしれません。 - カリウム:
余分な塩分を排出し、細胞の機能を正常に保つために必要なミネラルです。 - ペクチン:
食物繊維の一種で、お腹の調子を整える働きがあります。 - ヘスペリジン:
抗酸化作用があり、骨や関節機能の低下をサポートする可能性があります。 - β-カロテン:
体内でビタミンAに変換され、目や皮膚、歯などの健康を保つ効果が期待できます。 - β-クリプトキサンチン:
特に温州みかんに多く含まれる成分で、抗酸化作用や肝機能の向上、骨粗しょう症の予防にも効果があると言われています。 - クエン酸:
エネルギー補給や疲労回復を助ける効果があります。
ただし、これらの栄養素は、通常のバランスの取れたドッグフードを摂取していれば、基本的に不足することはないと考えられます。みかんはあくまでおやつといった補助的な役割として捉えるべきです。
水分補給
みかんの約8割以上は水分で構成されているため、水をあまり飲まない犬にとって、水分補給の手段の一つとして利用できます。特に暑い季節など、積極的に水分を摂らせたい場合に、風味付けとして少量の果汁を水に混ぜるなどの工夫も考えられます。
ただし、水の代わりにみかんばかりを与えることは、栄養バランスの偏りや、甘味を好むようになることによる偏食のリスクもあるため避けるべきです。
愛犬とのコミュニケーション
皮を剥いたり、種を取り除いたりする手間はかかりますが、手からみかんを与えることで、愛犬との触れ合いの時間を楽しむことができます。愛犬の様子を見ながら、ゆっくりと時間を共有することは、飼い主と犬の絆を深める良い機会となるでしょう。
犬のサイズに基づいた適切な量
犬にみかんを与える際の適切な量は、犬の体格や運動量、健康状態によって異なります。一般的には、おやつとして1日に必要なカロリーの10%程度に留めるのが理想とされています。しかし、みかんはカロリーが比較的低いため、カロリーだけで計算すると与えすぎてしまう可能性があります。
以下は、一般的な目安量ですが、あくまで参考としてください。初めて与える場合は、少量から始め、犬の様子を見ながら調整することが重要です。
犬の体格 | 体重の目安 | 1日に与えても良いみかんの量(Mサイズ相当) | 参考 |
超小型犬 | 4kg未満 | 0.5個 | 2 |
2.5kg前後 | 1/8個 | 4 | |
3kg | 1/2個 | 8 | |
小型犬 | 10kg以下 | 1~1.5個 | 2 |
5kg前後 | 1/4個 | 4 | |
5kg | 1~1.5個 | 8 | |
中型犬 | 25kg未満 | 2~2.5個 | 2 |
10kg前後 | 1/2個 | 4 | |
10kg | 2~2.5個 | 8 | |
大型犬 | 25kg以上 | 3.5個~ | 2 |
10kg以上 | 1個 | 4 | |
30kg | 3.5個 | 8 | |
体重1kgの犬 | 最大2房程度 | 10 |
これらの量はあくまで目安であり、犬の活動量やその日の食事内容によっても調整が必要です。問題がないからといって、毎日上限まで与えるのは避けるべきです。与えすぎは、下痢や消化不良、肥満の原因となる可能性があります。
犬にみかんを与える際の適切な方法

犬に安全にみかんを与えるためには、いくつかの重要な手順をふむ必要があります。
皮をむく
みかんを与える際は、必ず皮を剥いて果肉だけにしてください。みかんの皮には、消化しにくい成分や、農薬、ワックスなどが付着している可能性があります。また、ソラレンという中毒性のある物質が含まれているという情報もあります。
種を取り除く
みかんの種は消化できず、喉に詰まらせる危険性もあるため、必ず取り除いてください。また、種にはアミグダリンという有害な成分が含まれているという情報もあります。
薄皮と白い筋を取り除く
みかんの薄皮や白い筋(アルベド)には食物繊維が豊富に含まれていますが、犬は食物繊維の消化を苦手とするため、消化不良の原因となることがあります。可能であれば、これらも取り除いて果肉のみを与えるのが望ましいでしょう。
ただし、白い筋にはヘスペリジンやペクチンといった有益な成分も含まれているため、少量であれば問題ないとする意見もあります。初めて与える場合は、念のため取り除くことを推奨します。
小さく切るか潰す
特に小型犬や子犬、老犬に与える場合は、喉に詰まらせないように、みかんを小さく切ったり、房をさらに細かくしたり、軽く潰したりして与えるようにしましょう。老犬には、絞った果汁を与えるのも良い方法です。
熟したみかんを選ぶ
熟していない青いみかんには、アルカロイドという犬にとって有害な成分が多く含まれているため、必ず完熟したみかんを選んで与えてください。
加工品は避ける
市販のみかんジュースや缶詰、ゼリーなどの加工品には、砂糖や人工甘味料、添加物などが多く含まれているため、犬には与えないようにしましょう。特に、キシリトールは犬にとって非常に有毒です。
果汁100%の無糖ジュースであれば、少量であれば与えても良いとする意見もありますが、糖分が濃縮されているため、与えすぎには注意が必要です。冷凍みかんも体を冷やし、下痢の原因となる可能性があるため避けましょう。
犬にみかんを与えすぎた場合のリスクと副作用
みかんは適量であれば犬に安全ですが、与えすぎると様々なリスクや副作用を引き起こす可能性があります。
消化器系の不調
みかんには水分と食物繊維が豊富に含まれているため、与えすぎると下痢や嘔吐などの消化器系の不調を引き起こす可能性が高まります。また、消化不良を起こし、便に未消化のみかんがそのまま出てくることもあります。
血糖値の上昇と肥満
みかんには果糖が多く含まれているため、過剰に摂取すると血糖値が急激に上昇し、肥満の原因となる可能性があります。特に、運動不足の犬や肥満気味の犬には注意が必要です。
栄養バランスの乱れ
おやつとしてみかんを与えすぎると、犬が満腹になり、主食であるドッグフードを食べなくなる可能性があります。その結果、必要な栄養素を十分に摂取できず、栄養バランスが崩れてしまうことがあります。
アレルギー反応
まれに、みかんに対してアレルギー反応を示す犬もいます。症状としては、下痢や嘔吐、皮膚のかゆみや赤みなどが挙げられます。初めてみかんを与える際は、ごく少量から始め、犬の様子を注意深く観察することが重要です。
カリウムの過剰摂取
みかんにはカリウムが含まれています。通常、適量であれば問題ありませんが、過剰に摂取すると、特に腎臓や心臓に疾患のある犬の場合、高カリウム血症を引き起こす可能性があります。
みかんを与えることを避けた方が良い犬の特徴

特定の健康状態を持つ犬には、みかんを与える際に特別な注意が必要です。
糖尿病の犬
みかんは糖分を多く含むため、糖尿病の犬に与える場合は、血糖値のコントロールに影響を与える可能性があります。獣医師に相談し、指示に従って与えるようにしてください。場合によっては、与えるのを控えた方が良いこともあります。
腎臓病や心臓病の犬
腎臓病や心臓病を患っている犬は、カリウムの摂取量を制限する必要がある場合があります1。みかんにはカリウムが含まれているため、これらの疾患を持つ犬に与える際は、必ず事前に獣医師に相談してください。
アレルギーを持つ犬
過去に柑橘類に対してアレルギー反応を示したことがある犬や、イネ科の花粉にアレルギーを持つ犬は、みかんに対してもアレルギー反応を起こす可能性があるため、与えるのを避けるべきです。
子犬と老犬
子犬や老犬は、消化器官が未発達であったり、消化機能が低下していたりするため、みかんを与える際には特に注意が必要です。少量から試し、下痢や嘔吐などの症状が見られないか確認しながら、慎重に与えるようにしてください。老犬には、消化しやすいように絞った果汁を与えるのも一つの方法です。
薬を服用している犬
グレープフルーツなどの一部の柑橘類は、特定の薬の代謝を阻害し、薬の効果を増強したり、副作用を強くしたりする可能性があります1。みかんはグレープフルーツほど相互作用のリスクは高くないと考えられていますが2、念のため、犬が何らかの薬を服用している場合は、みかんを与える前に獣医師に相談することをお勧めします1。特に、グレープフルーツ、スウィーティー、ブンタン、ハッサク、甘夏ミカン、ダイダイなどの柑橘類は、薬を服用中の犬には避けるべきとされています6。
まとめ
犬にみかんを与えることは、適量であれば基本的に安全です。みかんに含まれるビタミンやミネラル、水分は、犬の健康維持に役立つ可能性もあります。しかし、与え方や量には十分な注意が必要です。必ず皮と種を取り除き、薄皮や白い筋も可能な限り取り除いて、小さく切ってから与えましょう。
与えすぎは消化器系の不調や肥満の原因となる可能性があります。特に、糖尿病、腎臓病、心臓病などの持病を持つ犬や、アレルギー体質の犬、薬を服用している犬、子犬や老犬には、より慎重な配慮が必要です。初めて与える際は少量から始め、異常が見られた場合はすぐに獣医師に相談してください。日々の食事はバランスの取れたドッグフードを基本とし、みかんはおやつとして、愛犬の健康状態を考慮しながら適量を与えるようにしましょう。